<森の中であそぶ> ~森の中を進むと、最後には黄金色に輝く池があらわれた~
8月の始めのことになりますが、今話題になっているsenkiya cafeのあるKAWAGUCHI SHINMACHI の中にあるgallery tanabikeにて、実験的なworkshopを行いました。
【話さないworkshopの可能性】
今回は近年一緒に仕事をする機会の多い、コンテンポラリーダンサーの大岩ピレス淑子とのコラボレーションworkshopでした。「森の物語」といったイベント全体の共通テーマがあったので新作のworkshopを考えました。
ピナ・バウシュ 春の祭典からヒントを得て、土をつかったworkshopにしてみようという案が上がり、森の中の静寂な時間を再現するような言葉を使わない内容を考えてみました。
おおきな木のworkshopでは、日頃できるだけ導入部分を膨らませ、対話の中からキーワードやイメージをひろげて制作に向かう流れをつくっているのですが、今回はあえて説明をしないという方法を。
薄暗く閉ざされた会場の中にある、土、水、木や草、湿度、匂い、光…。それらの関わりの現象からうまれる、影、ゆらぎ、プリズム、音…。それらの空間に置かれた子ども達が、どんな関わりをとっていくのか…。
素材のもつ力や会場の雰囲気、ダンサーと私の存在だけで、子ども達の感覚を喚起させることに集中しました。
workshopの前半は沈黙が続きました。だれも動きません。土の中で突っ立たまま辺りを見渡しています。
そんな中、一人の男の子が水面に足を入れました。
ピチャン…
今度は手を。
パチャン…
彼の言葉にならないような歓喜な声がこぼれると、
会場にはりつめた緊張の糸がプンッ…と切れました。
一人…、一人と動きだし、土を掴み、水に土を運び、泥を紙にぶつける…。
土に横たわり、全身に泥をつけ、土の上でうごめく…。
途中、色水の入ったカップを数か所に置くと、見つけた子どもの一人が思いっきり土の中にひっくり返す。
暗黙の了解のように、別の子ども達も真似ていく…。そしてそこから新たにそれぞれで発展していく…。
無言の中で、土や水が紙に擦れる音が響く。
子ども達のささやくような声が聞こえる。
誰一人、親の見ている場所に戻ることはありませんでした。
無言の90分。聖域のような空間でした。
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午後の部でも、同じ内容を行いました。
午後は親子の参加者が多く、午前中とは全く別のworkshopとなりました。
大人がこれほどまでに、泥だらけになること、大胆になることを欲していたのか…。と驚くほど、みなさん全開になって参加されておりました。
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なかなか土や水を持ち込んだ大掛かりなworkshopができる会場は少ないかもしれませんが、
私達は今回のworkshopに、究極のworkshopの可能性を見出しました。
それは「言葉のないコミュニケーション」です。
・説明や紹介のないものから、自ら遊びを見つけるのです。
・他の人の動きから、発展的なアイディアのヒントを得るのです。
・不自由の中から自由な視点を見つけるのです。
「説明がない」、「教えられない」という状態は、一度、自分の中の扉を全部閉めたような感覚になりますが、じわじわと、全神経が研ぎ澄まされていくような感じです。そして、自分が普段使わない扉まで開いていくような感覚です。
このworkshopを多くの方に体験していただけるよう、開催していただける美術館、gallery、他等を探しています。なにか手がかりがある方、よろしくお願いします。
創造アトリエおおきな木 代表:川﨑久美
info@ookina-ki.net